ジェイミー・フォバートが手がけたTギャラリア フォンダコ デイ テデスキで、ヴェネツィアの過去、現在、未来を体感する

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ジェイミー・フォバートが手がけたTギャラリア フォンダコ デイ テデスキで、ヴェネツィアの過去、現在、未来を体感する

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ジェイミー・フォバートが手がけたTギャラリア フォンダコ デイ テデスキで、ヴェネツィアの過去、現在、未来を体感する 
リテールの場を鮮やかな体験型空間に変身させることを得意とし、数々の受賞歴を誇るジェイミー・フォバート氏。フォンダコ デイ テデスキのデザインと内装の修復を一手に引き受けました。カナダ出身のフォバート氏は、世界の都市を巡って暮らすことで、都市生活の複雑さに身を置いてきました。そこから空間を占有するモノや人に快適な場所を作るための鋭い視点が養われたのです。心地よさとシンプルさを重視し、ひとつひとつの建物に備わる歴史と目的に最高の敬意を払って仕事をするフォバート氏。彼の持つ都会的な審美眼が、フォンダコ デイ テデスキの伝統的なヴェネツィア様式や、積み重ねてきた歴史と完璧な調和をなしています。

この独占インタビューでは、ヴェネツィアの伝統と現代の設計において、独創的な融合を見せるフォンダコ デイ テデスキの内装について語ってくれました。

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フォンダコ デイ テデスキの内装を手掛けるうえで、最も魅力を感じたことは何ですか?
フォンダコ デイ テデスキは豊かな歴史に彩られた、見事な建築物です。ヴェネツィアでも歴史的な建物としては規模が非常に大きい。最初は倉庫兼ドイツ人商人の宿泊施設として建てられていますが、その用途は時代に合わせて頻繁に変わってきました。宮殿のような豪奢な建物として使われたわけではないので、内装は質実剛健。一般にヴェネツィアっぽいと思い描くような派手な内装ではありません。威厳のある雰囲気をたたえた部屋や回廊は、素晴らしいリテールの旅路を演出できる要素にあふれていました。そのような場所に関わることができたのは、もちろん刺激的でした。

このプロジェクトへの建築的、設計的な視点でのアプローチを教えてください。
フォンダコ デイ テデスキの中を巡ることで素敵な旅路を作り出すというのが私たちのヴィジョンでした。階ごとに、歴史的な背景や製品の種類、ヴェネツィアといった要素に呼応しつつも新たなイメージと素材をもたらすようにできています。歴史的な環境と、そこに置かれる新しい作品との間に絶え間なく対話がなくてはなりません。古いものと新しいものが会話するような雰囲気ですね。私たちが目指したのは、すべての階で、変化と驚きを楽しみながら探索できるものを作ること。建築物、色彩、テクスチャーといったその都市が持つ魅力を、中世の建物とOMA (外観を担当した建築事務所) の大胆な発想に寄り添う形で設計に活かしています。

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ヴェネツィアの建築物という観点から、他とは違うフォンダコ デイ テデスキの特徴とは何ですか? 
まずは大きさですね。ヴェネツィアの平均的な建物と比較すると、フォンダコ デイ テデスキは途方もなく大きい。そして、カナル・グランデのほとり、リアルト橋に隣接という場所も驚きです。思いっきりヴェネツィアの中心ですよね。回廊が取り囲む中庭は、都会の小さい広場くらいの広さです。今は屋内ですが、元々は屋根がなくて屋外の庭でした。堅牢でいて洗練されている回廊がこのスペースに気品を与えていて、中庭を見ながらゆったりとした回廊を歩くと、ここでしか味わえない独特の感覚が楽しめます。

外観や内装について、この建物を眺めるだけでは気づきにくいポイントを教えてください。
確かに歴史を感じさせる外観ではありますが、実際のところ、構造自体はとても現代的なんです。1929年にイタリア当局はフォンダコ デイ テデスキの躯体を鉄筋コンクリートで作り変えることに決めました。これは想像を絶する過程だったはずです。外観のファサードと内装の石壁を温存しつつ、建物全体をコンクリートで補強したあとで、すべて漆喰を塗り直したわけですから。この改築の素晴らしい点は、何といっても今のフォンダコ デイ テデスキが非常に丈夫にできているということです。そのおかげで、通常のデパートでできることと変わりなく、調度品や什器も置けますし、さまざまな企画も実現できます。

設計の要素で、面白い、変わってるというところはありましたか?
回廊を取り囲む幅広い石製の欄干に、何か所か、幾何学模様が彫ってあるのを見つけたんですね。それは、ドイツ人商人が税関手続きを待つ間に遊んでいたゲームだろうと教えてもらったんですが、つい最近、同じ模様をイギリスの地方にある邸宅で見かけました。そこでドイツ語では「ミューレ」、英語では「ナインメンズモリス」というゲームだと知ったんです。私もそのゲームを入手しました。

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この建物について、興味深いエピソードがあれば教えてください。
偉大な画家との縁については、素晴らしい物語があります。1494年、ドイツ人画家のアルブレヒト・デューラーは、まだ23歳だったときに仲間とフォンダコ デイ テデスキに数か月にわたって滞在し、ヴェネツィアの芸術的な日常を満喫していたようです。後年、ヴェネツィアに戻ってきた彼は、ドイツ人が利用していたリアルト橋近くのサン・バルトロメオ聖堂に祭壇画を描いています。また、初代のフォンダコ デイ テデスキは1505年に焼失して、すぐに現在の外観に建て直されるのですが、若き日のティツィアーノ・ヴェチェッリオが、通用口に小さなフレスコ画を描くよう依頼されています。ヴェネツィアの人々はティツィアーノの才能を見出し、それから彼はヴェネツィアの芸術史上もっとも偉大な画家となっていくわけです。

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内装の設計を手がける際に、交易や文化交流の歴史や精神をどう活かしたのでしょうか? 
フォンダコ デイ テデスキは、建設された当時からこの世のさまざまなものの通商を執り行うための場所でした。2016年の現在、その用途を取り戻し、お客さまは以前より建物のさまざまな場所を訪れて、一層内部を楽しんでいただけるようになっています。ほぼすべての部屋が長い歴史を経てきたわけですが、それゆえサイズが固定されています。多くの部屋が、デパートとして想定するにはあまりにも小さい。私たちの仕事は、そういった空間をいかに人を惹きつける雰囲気にするか、実現する手段を考えることにありました。各部屋は、お客さまやスタッフの動線を考慮して、スムーズで快適に流れる空間にするために、慎重に検討を重ねる必要があります。交易の建物がセル状になるという類型化は13世紀に始まっていますが、お客さまにとっては商品や情報にもっと触れやすい環境となっています。変わらないのは、この建物に本来備わっている設計上の特性ですね。カナル・グランデを臨む場所やバルコニー、そして現代まで生き残った芸術作品やフレスコ画は未だに健在です。

歴史的な建造物を手がける場合、新しい建物と設計のプロセスは異なりますか? 
私たちのプロセスでは、来店するお客さまの視点で設計することを重視しています。建物の中をどう動くのか、どういった要素によって気持ちよく買い物してもらえるのかを追求しているんです。過去の内装をそのまま作り直すということはなくて、現在の感覚で咀嚼して、その良さを引き出す表現を目指しています。そして、それを個々の仕事やスタイルにするのですが、デザインしてきた調度品類にもそれが表現されています。

そのことを顕著に表すデザイン要素を1つ挙げるとしたら何でしょう?
靴売り場にある大理石の台座なんて面白い例ですね。ルネサンス期のイタリア絵画の衣類のひだや、バロック期のベールをかぶった彫刻に見られる質感への異様なこだわりに着想を得たうえで、独自のクラフツマンシップを駆使したものですから。彫刻で布のひだを立体的に表現する複雑で高度な技術を習得するには、かなりの年数がかかっていました。私たちは、カララ大理石の塊から台を3点作ることにしたのですが、まず美しいドレープを作った布で覆った台座を高度なソフトウェアを使ってスキャンし、彫刻機で細部に至るまで詳細に再現したのです。この過程では、ヴェネトの石工の皆さんが大きな役割を果たしてくれました。芸術作品としても印象的でインパクトのある仕上がりになったと私は思っています。

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イタリア、とりわけヴェネツィアが内装にどういった影響を与えていますか?
ヴェネツィアは、ガラス細工やゴンドラの彫刻から生まれた家具といったクラフツマンシップの歴史で有名な街です。邸宅にはファブリックや絨毯があふれています。私たちはこの豊かな歴史を活かし、ヴェネツィアの職人仕事に根ざしつつも、創造的で大胆なアイテムを現代的な形で作りたいと考えました。繊細なディテール、そう、ヴェネツィアの建物の出入口に施された幾何学模様や、台座作りのヒントにもなっている風雨にさらされた教会の石細工といったものが、調度品類や什器で再解釈されています。

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このプロジェクトで難関だったのはどういった点ですか?
ヴェネツィアの様式として、よくその仰々しいまでの華美な雰囲気が表現されますが、フォンダコの持つ荘厳さや、現代の建築家やデザイナーである私たち自身には合わないアプローチだと感じていました。ただもちろん、ヴェネツィアらしい素材や工芸品を使うことで、温かみやラグジュアリー感を打ち出したいとは思っていました。風雨にさらされた大理石やムラーノグラス、磨き上げられた漆喰。それらが、売り物である高級品の背景として抑制された感じを保ちつつ、整然と空間に並んでいるのです。

ヴェネツィアを数語で簡潔に表現するとしたら? 
「究極の優美さを持つ都市」と呼びたい。ある意味、この世のものとは思えないほど繊細で軽やかです。

このプロジェクトでヴェネツィアについてどんなことを学びましたか?
ヴェネツィアで仕事をすること、すなわち数年にわたって季節ごとにこの地を見続けたことになるわけですが、すごい特権をもらったなと思います。夜に音楽隊と出くわしたこと、ヴェネツィア潟越しにものすごい迫力の稲妻を見たこと。隠れ家のような場所で味わった美食の数々。それはみんな一緒に働いてきた素晴らしい人々が導いてくれたんです。観光客が押し寄せる場所を超えたところに、その都市の魅力的な顔があることを学びました。観光客が行く道をはずれて気ままに歩くと見えてきますよ。 

建築家として、旅が仕事に果たしてきた役割はどういったものでしょうか。
旅は建築家にとって、重要な学びの機会です。道中では、その街や場所、ディテールのリアリティを身をもって体験します。今の時代、さまざまな画像があふれていますが、実際に訪れることで建築物のあらゆることが見えてきます。素材の手触りや光の移動、そしていちばん大事なことですが、建築物と人間の身体との関係をリアルに感じるのです。写真では無理ですね。